経済のグローバル化が進む中、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き何に注目して事業を展開しているのか。さまざまな分野で活躍する企業・機関のトップに登場していただき、お話を伺います。
ITを取り入れラグビー革命
——昨年のラグビー・ワールドカップ・イングランド大会では日本代表史上初の1大会2勝。陰で支えた御社のデータシステムも注目されました。
弊社は2008年に立ち上げ、新規事業開発支援、マーケティング実行支援等のコンサルティングをしてきました。ラグビーとのつながりは3年前に日本ラグビー協会から声をかけていただいたのが最初です。元々ラグビーが大好きなのでとてもありがたいお話でした。とはいえ当時は今ほどラグビーは人気ありませんでしたからね。知名度が低かった上に日本代表はW杯でも負け続けていました。だからこそ大好きな日本のラグビーの強化に貢献したいという思いは強かったです。 ——日本ラグビーが大きく変わったきっかけは何だったのでしょうか。
11年ワールドカップ・ニュージーランド大会で日本は1勝もできないまま敗退。ここでヘッドコーチとして就任したのがエディ・ジョーンズ氏でした。これがひとつのターニングポイントとなりました。彼はこれまでの日本ラグビーの常識を覆し流れを変えたのです。ジョーンズ・ヘッドコーチの戦略の柱が「JAPAN WAY」と呼ばれるもので、一言でいうと「フィジカル、フィットネスを重視する」という戦略です。この戦略を支えるため弊社のシステム「One Tap」が導入されました。これは選手たちが起床直後から毎日コンディション、疲労度や筋肉の張りなどの項目を入力したり、フィジカル強化のプロセスを管理していくことを目的とする「ストレングス&コンディショニング(S&C)」と呼ばれる分野のデータ管理システムです。日々の選手の状態をスタッフが把握しておくことで怪我の発生を予防しながら追い込んだ練習を行ったり、選手個々の現在地把握などに役立てられます。 ——そうだったのですね。まさにITがもたらした「日本ラグビー革命」ですね。
それまでは日本人は身体的に小さいということからフィジカルでは強豪国には到底勝てないと言われてきました。そう信じられていたのです。前回のW杯まではとにかく「正面からのフィジカルコンタクトを極力避ける」ことが大前提でした。フィジカルで勝てないことをどう補うかという問いに基づく戦術でした。これではラグビーというコンタクトスポーツの根幹が成り立たないというのがジョーンズ・ヘッドコーチの基本的な考えでした。徹底的にフィジカルとフィットネスを鍛え上げようとしたのです。 ——7人制セブンス女子、男子ともリオ五輪の出場が決まりましたね。こちらにも導入を?
はい、導入しています。彼女たちもイングランドW杯で活躍した15人制の代表に負けず劣らずハードなトレーニングをして、素晴らしい戦いをしていたと思います。メディアでの発言を聞いてもフィットネスに自信を持っていることがうかがえました。 ——海外遠征も多く、選手たちも香港にこられていますが、海外で留意している点は?
海外に出ると環境が変わるのでコンディショニング管理がより重要になると思います。場所によっては時差もありますし、食事も水も、湿度も温度も、何もかもが変わります。日本国内とは全く異なるストレスが選手たちにかかることになりますので、それらをモニタリングして、コーチングスタッフに正確に必要なアラートを発するなど「One Tap」の果たすべき役割は大きくなります。 ——こうしたITをスポーツに取り入れる需要は増えていくと? 確実に需要が高まるでしょうね。すでにラグビーに加えて、野球、サッカー、テニス、アメフト、ボート、バスケットボール、ハンドボール、バレーボール、陸上競技、水泳といったありとあらゆるポーツ分野から声をかけていただいており、システムの展開していきます。また今後はセンシングなどのデバイス、いわゆるIoT(Internet of Things)とスポーツの融合が進んでいくと思います。ますますスポーツ×ITは面白くなっていくと思います。 (この連載は月1回掲載します)
【楢橋里彩】フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。 |
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