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最新号の内容 -20151002 No:1440
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 経済のグローバル化が進む中、自らの組織のために粉骨砕身するリーダーたち。彼らはどんな思いを抱き何に注目して事業を展開しているのか。さまざまな分野で活躍する企業・機関のトップに登場していただき、お話を伺います。
(インタビュー・楢橋里彩)

 

資産運用業務成長率は世界一

Nippon Wealth Limited, a Restricted Licence Bank(NWB) 
取締役兼CEO 中島努さん


【プロフィール】 1955年生まれ、東京大学卒。1980年日本長期信用銀行(現新生銀行)に入行。1998年Goldman Sachs証券東京支店に入社。2004年マネックス証券入社。2008年から中国事業を担当し、香港のBoom証券買収を主導。2011年Monex International 会長に就任。2013年6月退任。同年7月より香港にて取締役兼COOの長谷川氏とともにNippon Wealth Limitedの立げに従事。


——海外銀行の支店・現地法人を除いて、香港で設立された金融機関としてライセンス免許交付は51年ぶり、日本人設立による香港の地場金融機関として初の開業ですね。

 弊行は定期預金口座の開設や保険商品の販売代理などをメーンに個人向けの資産運用サービスを提供しています。筆頭株主の新生銀行をはじめ、プライベート・エクイティー投資会社ADキャピタル、東急リバブルなど10社が共同出資した持ち株会社OJBCの全額出資子会社となります。実は昨年1月に香港金融管理局(HKMA)に免許の申請をしていたのですが、51年ぶりということもあり取得に時間がかかりました。ようやく今年4月にHKMAから限定銀行ライセンスを認可いただき、香港証券先物事務監察委員会(SFC)から証券免許(Type1とType4ライセンス)も取得する見込みです。
 

——すで進出している日系金融機関は、こうした事業展開は手掛けていなかったということでしょうか。

 そうですね。日本の金融機関の国際業務は企業向けのサービスがメーンになっているのが現状です。日本の金融機関の国際業務の生業からきていると感じますが、日系企業の海外での個人向けサービスはいまだ注視されていません。そんななか日本人個人投資家ニーズは2010年あたりから少しずつ変化がでてきて国内での投資機会に飽き足らず世界での投資機会を求めるようになり、香港上海銀行(HSBC)に口座を開設しに香港に赴く人も増えていきました。
 

——香港市場のメリットをどうみていますか。

 香港は一般に売られているファンド数は2600を超え、プロ向けのヘッジファンドは大小合わせれば500社を超え、ウェルスマネジメントビジネスが世界で一番伸びています。規模では世界第5位とまだまだスイス、ロンドン、ニューヨークには及びませんが、伸び率では08年以降140%以上の伸びを記録し、世界の成長リーダーと言われてます。残念ながら日本はウェスルマネジメント業務は発展途上です。
 

——中国本土との結びつきも大きいですよね。

 そうです。本土のGDPがおよそ1200兆円と考えると、ゲートウェーという香港の位置づけが今後さらに重要になってきます。金融インフラがしっかり整ったなかで自由に事業が行えるというのも魅力の一つです。開業してから一番多い問い合わせは、香港の銀行で口座を開設してみたけど資産運用をどうしたらよいかわからないというものです。個人、法人の両方で海外投資をしたいという日本からの問い合わせもありますね。法人投資は個人以上に難しいのですが、運用するには言葉以上に商品を理解しなくてはいけません。日本とは金融常識も異なります。
 

——6月には米保険大手の香港法人マスミューチュアル・アジア(MMA)と業務提携されました。提携でどのような可能性が広がるのでしょうか。

 MMAは信用格付けがダブルAプラスというのが大きいです。保険商品は20〜30年のものが多いので、しっかりしたパートナーと組むことでお客さまに安心していただけると思っています。日本で売っている商品に比べ圧倒的に自由度があり、予定積立利率は年4.5%、保証利回りは年3%です。利回りが良く保険料が安いのです。主に日本以外のアジアに滞在している日本人を対象に、終身年金保険、75歳まで可能な生命保険、学資保険を取り扱っています。
 

——日本国内の不動産投資などといったインバウンド事業も積極的に行っていくそうですね。

 近年の円安、また20年の東京五輪を前に、特に最近は九州方面を中心に不動産投資される方も増えています。香港の高騰している不動産価格に比べたら日本の不動産はとても魅力的なんですね。持ち株会社の株主に東急リバブルや新生銀行などがありますので、海外の投資家向けに円ローンや物件提供などを円滑に進められる強みがあります。今後は、日本人向けに東南アジア・欧米などの不動産投資案件の紹介なども考えています。つまり、香港は不動産投資でも国際分散投資の拠点として活用できると考えています。

※弊紙の印刷分におきまして、下記の記載間違いがありました。各方面にご迷惑をおかけしましたことをお詫びして、下記の通り、訂正させていただきます。

 (誤)分配利回りは年45% ⇒ (正)予定積立利率は年4.5%

(この連載は月1回掲載します)

【楢橋里彩】フリーアナウンサー。NHK宇都宮放送局キャスター・ディレクターを経てフリーに。ラジオDJとして活動後07年に中国に渡りアナウンサーとして大連電視台に勤務。現在はイベントなどのMC、企業トレーナー、執筆活動と幅広く活躍中。