過去1年で20%上昇
不動産評価などを行う特区政府差餉物業估価署が8月7日に発表した6月の住宅価格指数(1999年を100とする)は300・7(速報値)。初めて300の大台に乗り、過去最高を更新した。中国経済の減速、米国の利上げ、株式相場の乱高下による影響が住宅相場の下げ圧力になるともいわれているものの、不動産業界では下半期も上昇を続けるとの見方が大勢で、10%の上昇も予測されている。(編集部・江藤和輝)
6月の住宅価格指数は5月の298・5から0・74%上昇。昨年4月から15カ月連続の上昇となり、過去1年で20・1%上昇、過去半年で8・05%上昇。不動産代理の中原地産が7日に発表した中古住宅価格の指標となる中原城市領先指数(CCL)は146・07で、同じく過去最高を更新。CCLは上半期では8・39%上昇した。 不動産コンサルタントの多くは住宅価格が下半期も上昇を続けるとの見通しを示している。ナイト・フランクは中小型物件が3〜5%上昇すると予測。DTZは中小型物件の通年伸び率予測を年初に発表した15%から20〜25%に上方修正。上半期だけですでに約15%上昇しているため、下半期さらに5〜10%上昇を見込んでいる。高級物件も下半期に10%上昇するとみる。ジョーンズ・ラング・ラサールは、上半期は高級物件が2・5%上昇、中小型物件が6・9%上昇したと指摘。特に中小型は引き続き高い伸びを維持し、下半期は3〜5%上昇、通年では10%上昇するとみる。また不動産代理の利嘉閣地産は、中小型物件が下半期2〜3%、通年で8%上昇、高級物件が下半期5〜6%、通年で10%余り上昇すると予測している。 不動産代理の美聯物業が7月の株式市場の乱高下を受けて実施した不動産投資に関するアンケート調査でも、市民の多くが住宅価格の上昇を見込んでいることがうかがえる。調査は7月下旬、1286人を対象に行われた。回答者のうち不動産を所有している人は64%。うち16%は株式市場の混乱を受け「買い替えを先送りする」、11%は「売却を先送りする」と答えたが、60%余りは「不動産投資に影響しない」だった。これから不動産を購入する人では、「影響しない」が45%、「購入を先送りする」が25%だった。年内の住宅価格の動向については「10%以内の上昇」が30%、「10%以上の上昇」が12%で、合わせて42%が住宅価格の上昇を見込んでいる。一方、「横ばい」は31%、「下落」は27%だった。 新築住宅の売り出しが活発化しているため不動産代理ライセンス所持者も増えている。不動産代理業を監督管理する地産代理監管局が発表した統計で、7月末現在の不動産代理ライセンスを持つ個人は3万6738人となり、前月末に比べ358人(1%)増加。8カ月連続で増加し、2013年7月以降の過去2年で最高となった。過去最高を記録した13年4月の3万7173人に迫っている。上半期に不動産代理資格試験を受けた人は2218人で、前年同期比20%増。営業員資格試験を受けた人は3107人で、同72%もの増加となった。 不動産代理が増加した背景には昨今の市況のほか、中国本土のQ房網が香港に進出してきた要因がある。不動産代理の競争が白熱化し、中原地産は年内500人、美聯物業は年内800人を増員する計画を明らかにしている。Q房網は2年以内に200店舗7000人にまで拡大する計画だ。 住宅価格上昇に伴い家賃相場も上昇を続けている。差餉物業估価署が発表した6月の家賃指数は173・5(速報値)で、5月の172・7から0・46%上昇。16カ月連続の上昇で過去最高を更新。過去1年では10・3%上昇。過去半年では4・4%上昇。美聯物業の家賃相場の指標である「租金走勢図」では6月の50大団地の家賃相場は実用面積1平方フィート当たり平均33・9ドル。15カ月連続の上昇で過去最高を更新した。過去1年では9・6%上昇。過去半年の伸び率は3・5%となる。同社は第3四半期には2〜3%上昇、今年通年では6~7%上昇すると予測している。
極狭アパートに20万人居住 香港では家賃の高さから極端に狭い住宅に居住する市民も多い。政府統計処は昨年6~11月、域内2252棟の築25年以上の民間ビルを調査。これを基に推計したところ、全フラットの3・9%に当たる約2万4600のフラットがいくつかの部屋に分けて賃貸しており、1つのフラットは平均3・5戸に分けられている。それら分割された極狭アパートは8万6400戸、そこに住む市民は19万5500人とみられる。同調査では極狭アパートに住む5075戸を訪問。住人の月収中位数は1万1800ドル、家賃の中位数は3800ドル、面積の中位数は9・5平方メートル、1人当たり平均居住面積はわずか5・7平方メートルだ。 低所得層の住宅問題は深刻を極めている。6月末現在の賃貸型公共住宅の累積入居申請(当選待ち状態)は28万2200件に上り、過去最高を更新した。過去1年で10%増。うち一般の申請者は14万200件で、平均待ち時間は3・4年。政府が目標としている平均3年を超えているほか、13年末の平均2・9年、14年末の平均3・2年に比べますます悪化している。 一方で政府が近年、積極的に公有地売却を行っている効果も反映され始めた。運輸及房屋局は7月末、四半期ごとに割り出している今後3〜4年の民間デベロッパーによる潜在的住宅供給量を発表。第2四半期は8万3000戸で、第1四半期の7万8000戸から6・4%増、記録のある04年9月以降で最高、初めて8万戸の大台に乗った。年平均の供給量は2万800〜2万7700戸となり、長遠房屋策略督導委員会が見込む年間1万8800戸の需要を上回る。 屋宇署の統計によると、上半期の民間デベロッパーによる住宅着工数は8887戸で、前年同期の3053戸に比べ3倍近く。すでに昨年通年の6257戸を約40%も上回った。上半期だけで見ると08年以降の過去8年で最高となり、通年では1万5000~1万8000戸に達し過去15年で最高となることも見込まれている。 梁振英・行政長官が就任前から掲げていた香港市民限定の住宅も供給が進んでいる。8月8日は36度を超える過去最高気温の炎天下、香港房屋協会が長沙湾に開発する5カ所目の香港市民限定住宅「喜漾」の物件選びで市民が行列をつくり、10時間余りで275戸が完売した。事前の購入申請は約5950件に上り、21倍の競争率だった。 梁長官は公式ブログで民間住宅の潜在的供給量が過去最高となったことに触れ、発展局の過去3年の努力を慰労するとともに、「立法会で議事妨害を行い土地供給を阻もうとしている者がいる」と民主派を非難した。梁長官は就任以来、香港の社会問題の元凶とみなす住宅問題の解決を最優先課題としているものの、まだまだ壁は多い。 |
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