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中国対イスラムの開戦
5月22日、新疆ウイグル自治区ウルムチ市内の朝市で爆発事件が起き、31人が死亡し94人が負傷した。今年に入って中国国内で大きなテロが頻発している。しかしこのテロは縮小するどころか拡大する。ウイグル自治区には多くのイスラム教徒が在住しており、そのイスラム教徒を弾圧するとどういうことが起こるのか? やがて中国政府はとんでもない相手と戦っているのを知ることになる。
新疆ウイグル自治区にとって強力な助っ人が誕生しつつある。中央アジアに位置するアフガニスタンである。アフガニスタンはご存じイスラム原理主義タリバンの拠点で、世界有数のテロ養成所である。この十数年は米軍が駐留していたおかげでタリバン勢力は衰えていた。現在3万2000人の米軍が駐留しているが、14年末以降は9800人に縮小し、16年には米軍が完全撤退する予定である。もし米軍の撤退が実現したら貧弱なカルザイ政権ではタリバンと抗するのは難しい。タリバンは武器やミサイルの密輸で資金を蓄え、軍備拡大を進めており、ご近所の新疆ウイグル自治区の同胞である一部のイスラム過激派を支援することは間違いない。
3月8日、アジアにおけるイスラム教国マレーシアのクアラルンプールから北京に向けて離陸したマレーシア航空370便が「失踪」した事件は記憶に新しい。香港の人権民主化運動情報センターは3月9日、北京の防空部隊に「人民大会堂や中南海に近付く民間機があれば撃墜せよ」との緊急指令が下っていた事実をスクープしている。中国軍の規定では航路を外れた不審な民間機に対しては確認、警告、威嚇、強制着陸というステップを踏んでから、いずれにも従わなかった場合にしか撃墜できないそうだ。
中国外交は「焦り」
今の中国の外交を一言でいうと「焦り」に集約される。尖閣諸島における日本との衝突、南沙諸島、西沙諸島の領有権をめぐるフィリピンやベトナムとの摩擦激化は、国内景気の後退で一般大衆の不満が鬱積している上、ウイグルやチベットの国内の不満分子を抑えられなくなっていることがある。ベトナム船が中国漁船の体当たりで沈没させられた際、ベトナムが中国批判を展開、そしてそのベトナムに対して政府高官は「罵詈雑言」を浴びせていた。何かその姿に中国の余裕のなさ、焦りが感じられた。本来、大物は小物を相手にしないが、大国の中国が必死になってベトナムを批判する姿は、そこまで中国が追い込まれている現状を露呈してしまった。
米国はテロに無関心
米共和党政権時代の戦略はイラクとパキスタンの米軍駐留によって、その間にあるアフガニスタンのテロ養成所のタリバン一派を掃討することにあった。しかしオバマ大統領がそれをすべて水の泡にしてしまったのだ。ひいては中央アジアにおけるパワーバランスが崩れて、中国国内のテロが頻発する原因となっている。今後はアフガンのイスラム原理主義と新疆ウイグル自治区の一部イスラム過激派が手を結び、中国政府にとっては非常にやっかいな存在になる。
トム:アベノミクスが「泡のミクス」になってしまった。いったい日本の株価をどうしてくれるんだ? ジェリー:安倍さんって日本の株価を一番気にしているそうよ。株価が下がると来年10月に予定されている10%への消費増税がとん挫するので、必死だそうよ。 トム:「必死のパッチ」の割には全然経済対策が出て来んのお。出てくるのはタメ息ばかりじゃわい。 ジェリー:安倍さん、こう見えてもかなり努力してるのよ。子育て支援に待機児童ゼロ、女性の就業機会の拡大など。立派なものだと思うけどね。 トム:わしの言ってるのは、「今すぐに」ということ。どれもこれも何年掛けて景気対策にするつもりだ。柿でも8年で実がなるぞ! ジェリー:そうねえ。東京五輪が決まってから気がゆるんじゃったんでしょ。だから株価対策に一生懸命で日本銀行に株買いの余力がなくなったから、無理やり年金基金に株式を購入させようとしているの。 トム:バカ、危ないじゃないか。わしの年金も含まれてるんじゃぞ。損したら誰が穴埋めするんだ? ジェリー:あなたと、その子孫よ。それが何か…? トム :わ、わし〜? また子孫に先送りか? 日銀の損失も最後の手段は公的資金で埋めるから、わしの税金でカバーするんだぞ〜! 年金が損したら年金給付が減って、全部最後は国民の負担か。安倍ちゃん、虫が良過ぎやしないか? ジェリー:だってまだ支持率高いでしょ。 トム:みんなで安倍ちゃんに応援歌を送ろう。「♪ポッ、ポッ、ポッ、鳩ポッポ、豆が欲しいかやらないぞ、世の中、そんなに甘くない」。みんなで公的資金の株価買いは、はんた〜い。
【東南アジア諸国連合】 アセアンとは、Association of South‐East Asian Nationsの頭文字を取っている。加盟10カ国の経済・社会・政治・安全保障・文化に関する地域協力機構。本部はインドネシアのジャカルタに所在する。10カ国はタイ、マレーシア、シンガポール、ブルネイ、フィリピン、インドネシア、ベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマーである。経済規模が域内最大のインドネシアでさえ2012年時点で8949億ドルであるが、10カ国を合計すると2兆3600億ドルになり、英国やフランスの経済規模に匹敵する。小国同士でも団結することによって世界における一定の発言力を維持することができる。
筆者紹介
沢井智裕(さわい・ちひろ)
ユダヤ人パートナーと資産運用会社、ICGインベストメントマネジメントを共同経営。ユダヤ系を含め2億米ドル超の資産を運用する。現在はハイテク・バイオ分野を中心に日系企業とイスラエル企業を対象に「世界最高技術の合弁企業群」の構築に取り組む。著書に『世界金融危機でも本当のお金持ちが損をしなかった本当の理由』など多数。 |
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