6月に香港公演 蜷川氏の足跡をたどる展示会も
昨年亡くなった蜷川幸雄氏が演出を手掛けた『NINAGAWA・マクベス』が、来る6月に香港で上演される。シェークスピアの作品を日本の安土桃山時代へと舞台設定を移した同作は、蜷川氏の最高傑作ともいわれる。今回は、2015年より主役を務めている市村正親(マクベス)、田中裕子(マクベス夫人)や蜷川組のキャスト、妹尾河童や辻村ジュサブローなどのスタッフが参加する、まさしく日本からの引っ越し公演だ。香港公演は日本国内や英国、シンガポールに先駆けての上演となる。 生前蜷川氏は「マクベスは今の世と、死後の世界を繋ぐ仏壇」と話していた。仏壇を開けて位牌と対話できるということは、シェークスピアの作品が自分たちの物語になるということだと直感したという。お彼岸には家で仏さんを迎え、お重を持って墓参りに行き、ご先祖のお墓や桜の樹の間で食事をする。ある時期までごく普通に日本人の生活にあった風景が、そのまま「我々のマクベス」になるだろうと——。翻訳劇を学ぶという意識から抜け出し、欧州の人々が庭や旅籠で芝居をするような感覚でシェークスピアを創れる、日本人がシェークスピアをやる意味がこれで見つかったと思ったんだと語っている。 蜷川氏演出作品の香港での上演は、1989年の『王女・メディア』、2014年の『鴉よ、おれたちは弾丸をこめる』(さいたまゴールドシアター)に続き、これが3回目。蜷川氏はさいたまゴールドシアターの香港公演の際には共に来港しリハーサル指導、その合間をぬって当時発生していた金鐘周辺の「雨傘運動」の視察など活発な行動を行っていた。しかし初日公演直前に病に倒れ緊急入院。そのため蜷川氏にとって香港は最期の海外訪問先となった。なお2014年公演の模様は本紙1421号を参照されたい。
また、蜷川幸雄氏の足跡をたどる展示会(参観無料)が紅ハムの高山劇場(6月6日〜19日)、尖沙咀の香港文化中心(6月21日〜7月9日)にて開催されるので、こちらもぜひ見ておきたい。
なお香港公演が発表されるや、日本はもとより台湾やアジア各国から主催者に問い合わせが数多く寄せられ、チケットの売り切れが予想されるので、早めに手配するほうがよいだろう。(取材協力と写真提供:康樂及文化事務署、ホリプロ) |
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