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最新号の内容 -20170324 No:1475
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《71》

国外財産に係る納税義務の見直し

 月1回のこのコーナーでは、香港・日本・中国等を中心とした税金等に関する問題についてご紹介させていただきます。日本における2017年度税制改正大綱のうち、外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)の見直しについては前回以前に解説いたしましたが、その他に香港居住者に影響がある税制改正として国外財産に係る納税義務の範囲の見直しがありますので、今回はこれについて解説いたします。

 

現行法の概要

  現行法では、被相続人(相続される人)・贈与者および日本国籍を有する相続人(相続人が相続する財産や権利義務のもとの所有者)・受贈者がいずれも5年超国外に居住している場合には、国内財産のみが相続税および贈与税の課税の対象とされています。これを図示すると図表1の通りです。

 しかし、この取り扱いを利用して、国外に資産を移した上で5年を超えるように国外に居住し、相続税及び贈与税の課税を逃れようとする富裕層等の存在が指摘されていました。

 また、転勤等により日本に一時的に在留している外国人については、その外国人が被相続人・贈与者または相続人・受贈者のいずれの立場になる場合においても、国内財産のみならず国外財産にまで課税が及ぶこととされており、このような制度が高度な技能を持った外国人の来日を阻害しているとの懸念がありました。これらの状況を踏まえ、2017年度税制改正では、国外財産に係る納税義務者の範囲が図表2のように見直される予定です。
 

図表1:現行法


改正案の概要

 これらの状況を踏まえ、2017年度税制改正では、国外財産に係る納税義務者の範囲が図表2のように見直される予定です。

①国内に住所を有しない者であって日本国籍を有する相続人等に係る相続税の納税義務について、国外財産が相続税の課税対象外とされる要件を、被相続人等および相続人等が相続開始前10年(現行:5年)以内のいずれの時においても国内に住所を有したことがないこととされました。これまで、相続税等の課税を避けるために海外へ移住するケースがよくありましたが、5年から10年へと要件が厳しくなるため、そのようなケースは減ることが想定されます。

②被相続人等及び相続人等が一定の在留資格をもって一時的滞在をしている場合等の相続又は遺贈に係る相続税については、国内財産のみを課税対象とすることとされます。日本で就労する外国人が増加していることへの対応として、一時的に日本に住所を有する外国人同士の相続等については、国外財産を相続税等の課税対象としないこととなります(現行制度では、国内財産及び国外財産の両方が課税対象)。これにより、高度外国人材等の受け入れの促進にもつながると期待されています。
 

図表2:改正案


適用開始時期

 上記の改正は、2017年4月1日以後に相続等により取得する財産に係る相続税等について適用されます。


まとめ

 日本国籍を有していても、今までは海外に5年居住すれば、国外財産については相続税・贈与税の課税対象外となっていましたが、10年に延長されたことで、海外移住による相続・贈与の節税は極めて難しくなりました。相続を視野に入れている富裕層または企業オーナーは、別の方法による相続税対策を検討する必要があります。

(このシリーズは月1回掲載します)

 

 

筆者紹介

フェアコンサルティング(香港)

 東京、大阪、香港、上海、蘇州、台湾、ベトナム、フィリピン、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、インド、メキシコ、オーストラリアを拠点に多数のグローバル企業のサポートを行っているフェア コンサルティンググループの香港拠点。同グループは国税当局や大手会計事務所出身で経験豊富な公認会計士、税理士スタッフが、日系企業が抱える諸問題を解決するための税務・財務戦略を企画・立案・実施支援しています。

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